戦国期に活躍した忍者その忍者の源流をたどる。

〃忍術〃と〃倫盗術〃

忍者とは何か?芭蕉は偉大な詩人である。もし、忍者に近い意味でよぶとしたなら、たぶん、情報伝達者にすぎない。そんな風流な芸能者(総じて文化人とよんでいいが)はずいぶんいた。各種メデイァのない時代であったから、巷云の普及・伝播をはかろうとするなら、みずからが廻国、ないし漂泊しなければならない。在原業平がそうであり、西行がそうであり、能の世陣弥がそうである。中世から戦国にかけての時期は、廻国する学僧・連歌師たちを多く輩出した。  

たとえば万里集九は江戸の太田道潅を訪ねる途中、尾張(愛知県)清洲の織田 氏をはじめ、道中有力者のもとへ立ち寄っているし、飯尾宗祇は生涯を旅で終えている。  室町時代の連歌師柴屋軒宗長など、何度も東海道を上下,した。津島(愛知県津 島市)の正覚院に宿泊したときには、織田信秀(信長の父)の訪問を受けている。その彼が、たとえば今川氏や武田氏に招かれた際、何かのついでに、「織田家ではこれこれでありました」 などと語るのは、まあ自然な会話というものだろう。それを情報としてとらえるかどうかは、聞くほうの裁量であって、伝達者の知るところではないのである。

江戸期に入って諸国を回り、腕を磨き、芸を広めた

江戸期に入ってもそうで(絵師、碁打ち、将棋指)まで、諸国を回り、腕を磨き、芸を広めた。彼らは絵好き、碁・将棋好きの家に数日逗留しては、紹介状をもらい、次々と渡り歩いたものである。その間、諸地方の地勢・人情を知るのは当然であり、それを人に語るのもごく自然の成り行きだった。さらに越中(富山県)の売薬商に代表される廻国商人や、廻 国兵法者もそうだろう。廻国兵法者の場合、「武者修行は遠近にかぎらず、国々へおもむき、その地、その所で聞えた人物を訪い、業学びを試みるものである。が、そのまことは、国々の風俗、国主城主の様子、士卒の強弱、和不和、兵器のたしなみ方などを見聞し、かつ地理をも調べるにある」『剣法略記』というふうに、諸国探索をより積極的にとらえる部分があるが、これとて自身の識見を深め、蓄積することでしかない。 重ねていえば、忍者ないし忍者行動は、命令者があってはじめて成立する。 ま その内容は、敵と目される相手の情報、秘密を探り、流言を撒いて混乱させ、屋敷や城に潜入し、目的物を奪取したり、放火したり、ときには暗殺したりすることである。  対立者があれば、だれでもその内容を知りたいだろうし、混乱させ、あるいは抹殺したく思うだろう。遺憾ながら、人間社会の発生とともにある暗い一面であって、今日でも、盗聴器を仕掛けたり、一部社会では暗殺さえ行なわれたりするわが国では、聖徳太子が〃志能備″を側に置いたのがはじまりとされ、諸流の 祖として源義経、楠木正成、甲賀一一一郎、伊勢義盛らの名が並ぶ。また『孫子』の 兵法をもとと、し、山伏修験から起こったともいう。 が、これらは忍術伝書や由緒を飾るものでしかなく(それ自体、忍術の昇華を志向するものであるにせよ)、実体は人間の本然にひそむ暗黒部分の実行にある。なにも祖といわれる人たちによって、あるいは『孫子』が入ってきて起こったわけではない。 命令者はその実行を命じ、受けた者は目的意思を明確にして果たす。それが忍者 行動である。もともと、「忍術とは倫盗術なり」という率直な表現がある。

兵法秘要霜盗之巻(延宝12年)忍術伝書

忍術伝書にも、

●兵法秘要霜盗之巻(延宝一二年)

●忍術秘伝霜忍目録(芥川流・年代不詳)

●軍法侍用集中窃盗巻(年代不詳)

●霜盗秘密年鑑(火術書)

といった、盗賊を意味する語句を使用したものが少なくない。
 また、諸藩に設けられた忍者団の名称に、〃倫組〃(加賀藩)や〃黒腔巾組〃(仙
台藩)など、盗賊を思わせるものもある。忍者の行なう忍術が愉盗術と異なるのは、命令者により、ある目的のために倫盗術を使うところにある。これに対して盗賊は、倫盗のために忍術を使う。もっとも、ものを奪取されたほうからいえば、単に盗賊にしてやられたと思うほかないが、結局忍術と倫盗術の違いは、命令者のあるなしにかかわることなのである。たとえば、相州ラッパを率い、小田原北条氏のために働いた風魔小太郎、甲州スッパを率いて武田氏に尽くした高坂甚内らは、それぞれ主家を失うとともに、新興地江戸を盗み荒らして、単なる盗賊と化してしまった

不可思議・不気味な忍者たち

忍者の源流をたどる

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戦国期に活躍した忍者たち。戦国期の心ある大名・武将は皆、いわゆる〃忍者“ないし〃忍者集団“をもっていた。忍者の行動の根本は、〈情報の収集、ならびに処理〉にある。事をなす者にとって、その必要性はいまも昔も変わらない。働き手の優劣はもとより、使う側の機構・判断力が、ただちに戦略にかかわるものだからである。そんな忍者の秘密に迫ってみました。